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【百人一首解説】NO.6  中納言家持

百人一首

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かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける

〈画像:Wikimedia Commons〉

現代語訳

カササギが翼でかけたという天の橋(天の川のこと)に、

霜が白く降りているのを見ていると、夜もすっかり更けたものだと感じる

【かささぎ(鵲)】

七夕伝説に登場する鳥。

織姫と彦星が年に一度天の川を渡るとき、翼を並べて橋をかけるという役目を持ちます。

〈画像:Wikimedia Commons〉

この歌では、天の川にかかる幻想的な橋の象徴とされています。

【渡せる(わたせる)】

(橋などを)かけたという意味。

「渡す(かける・通す)」の連体形「渡せ」に、完了の助動詞「り」の連体形「る」がついたもの。

【おく霜】

「おく」は「置く」で、霜が地面や橋の上に降り積もっている様子。

霜がうっすらと降りて白くなっている状態と表す。

【夜ぞ更けにける(よぞふけにける)】

「夜がすっかり更けてしまったのだなあ」の意味。

更け:動詞「更く(ふく)=時間が過ぎて夜が深くなる」の連用形。

にける:「ぬ(完了)」+「けり(詠嘆)」で、「すっかり〜してしまったなあ」という意味になる。

作者中納言家持(大伴家持)

中納言家持 (ちゅうなごんやかもち)〈生没年 718年頃~785年〉

中納言家持は、本名を大伴家持(おおとものやかもち)と言います。

大伴家持は高校で習う名前なので、こちらの名前の方が馴染みがあるかもしれません。

奈良時代を代表する歌人であり、また政治家としても活躍した人物です。

大伴氏という古代の名門豪族の出身で、朝廷に仕えながら多くの和歌を詠み、最終的には中納言という高位にまで昇進しました。(中納言は律令制度下の官職名)

大伴家持は、日本最古の和歌集『万葉集』の編纂に深く関わったとされており、自身の歌が470首以上も収録されていることからも、その重要性が伺えます。

彼の作風は自然や季節、人の感情を率直かつ写実的に表現するのが特徴です。

例えば「春の園 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つをとめ」といった色彩豊かな歌からも、その感性の豊かさが伝わります。(春の庭に紅く美しく咲く桃の花が、道を照らす様に咲き誇る中、その道に一人の乙女が立っている。)

政治の世界では藤原氏との政争に巻き込まれ、晩年には最終的に東国へ左遷され、波乱の生涯を終えました。

しかしその文学的功績は後世に大きな影響を与え、「万葉集の顔」ともいえる存在として日本文学史に名を刻んでいます。

 ☃️鑑賞:冬の夜の静けさと、時間の移ろい

この歌は、冬の夜の静けさと、時間の移ろいを繊細に描いた一首です。

冒頭の「かささぎの渡せる橋」という表現は、七夕伝説に登場するカササギが天の川にかけた橋を指し、幻想的なイメージを呼び起こします。

実際の橋を意味しているとも、夜空にかかる天の川を例えているとも解釈でき、空想と現実が巧みに交錯している点に、この歌の大きな魅力が秘められています。

そこに「おく霜の白き」が重なり、霜が降りてあたりが白く染まる様子が目に浮かびます。

霜の白さはただの気候描写ではなく、静まり返った冬の夜を象徴しており、見る者の心に深い印象を与えます。

最後に「白きを見れば 夜ぞ更けにける」と結ばれる事で、視覚的な変化を時間の経過とともに描いています。

「音もなく更けていく冬の夜、その美しさと寂しさ」を、詩情豊かに詠み上げた、幻想的かつ写実的な歌なのです。

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