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今回の和歌
91番 後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん) 『新古今集』秋・518
きりぎりす 鳴くや霜夜(しもよ)の さむしろに
衣(ころも)かたしき ひとりかも寝む

〈画像:Wikimedia Commons〉
現代語訳
現代語訳
こおろぎが鳴いている霜の降りた夜、
冷たいむしろの上に衣を片方だけ敷いて、私はひとりで寝るのだろうか。
語句解説
【きりぎりす】(虫が苦手な方もいらっしゃるので、気になる方は検索してみて下さい)
現在の「コオロギ」にあたる虫。
秋から冬にかけて鳴く虫として、古くから歌に詠まれました。
平安時代には、今で言う「マツムシ」を指す場合もありました。
【鳴くや霜夜(しもよ)の】
「や」=7文字の文字数(語調)を整える為の間投助詞です。(字足らず回避の語法です)
「霜夜」= 霜が降りる寒い夜。
晩秋から初冬にかけての季節感を表す語です。
「キリギリスが鳴く、霜が降りる寒い夜」という訳です。
【くらぶれば】
「比べると」の意味。
動詞「くらぶ」の已然形に接続助詞「ば」が付き、順接の確定条件を表します。
【さむしろに】
「さ」は言葉を整える接頭語です。(今回も字足らず回避の語法です)
「さむしろ」=「寒し」と掛詞になっています。
「むしろ」(下の写真)は藁などで編んだ敷物で、寒さを凌ぐ道具としても使われていますした。
〈画像:Wikimedia Commons〉
【衣かたしき】
古代の慣習では、男性と女性が一緒に寝る場合、お互いの着物の袖を枕代わりにしていました。(今で言う腕枕です)
「かたしき」=「片敷き」で、自分の袖を自分で敷く寂しい独り寝のことです。
相手がいないことを暗示しています。
【ひとりかも寝む】
「(愛しい人もいない)こんな長い夜を、自分は一人で寝るのだろうか」という意味。
「か」は疑問や詠嘆を表す係助詞、「も」は強調の助詞、「む」は推量の意味で使われています。
「かも寝む」で、「〜してしまうのだろうか(自分は)」という迷いや不安の気持ちを含んでいます。
↓「ひとりかも寝む」を使った柿本人麻呂の句も、ぜひご覧ください!!↓
ちなみに今回の和歌は、柿本人麻呂の和歌をアレンジして作られた和歌です。
作者: 後京極摂政前太政大臣
九条 良経(くじょう よしつね)〈1169年 ~ 1206年〉
〈画像:Wikimedia Commons〉
平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した摂関家の公卿であり、同時に優れた歌人としても名を残した若き天才です。
関白・九条兼実の長男として生まれ、祖父が法性寺忠通です。
↓祖父の法性寺忠通の句も解説しています、ぜひご覧ください!!↓
九条家は藤原北家の嫡流であり、朝廷政治の中枢を担う家系であった為、幼少期から高い教養と政治的素養を身につけ育ちました。
官位昇進は極めて早く、20代で右大臣に任ぜられ、のちに左大臣・太政大臣を務めるなど、藤原氏の中でも圧倒的な存在感でした。
『新古今和歌集』の編纂にも深く関わったと考えられており、彼の歌は同集に多数収録されています。
しかし在職中に36歳という若さで急逝し、その死は宮廷社会に大きな衝撃を与えました。
もし長命であれば、政治・文化の両面で更に大きな足跡を残していたと考えられる惜しい人物です。
鑑賞:初冬に聴く鳴き声、一人寂しい夜🦗
晩秋から初冬にかけての情景と孤独感を重ね合わせ、静かながらも深い感情を描き出した一首です。
虫の声として詠まれた「きりぎりす」は、当時の人々にとって季節の移ろいを告げる存在であり、その鳴き声は寒さや寂しさを一層際立たせています。
霜夜という厳しい冷え込みの中、むしろの冷たさが身にしみ、しかも衣を「片敷き」にしていることから、恋人や伴侶が共にいない孤独な状況を強く暗示しています。
特に「衣かたしき」という表現は、平安時代の男女の共寝の習慣を踏まえた象徴的な言い回しで、片方しか敷かれていない衣は、相手が不在であることを視覚的に伝えます。
さらに結句の「ひとりかも寝む」には、「そうするしかないのだ」という諦念の響きがあり、感情の深さと抑制された表現美が際立たせています。
今回の和歌は、柿本人麻呂の和歌をアレンジして作られた和歌です。(本歌取りという歌遊びです)
作者である九条良経も、「一人で孤独に寝る夜が、本当に寂しくつらい」という事実に共感し、この一節を軸に今回の和歌を詠んだのかもしれませんね。
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