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9番 小野小町(おののこまち) 『古今集』春・113
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに


〈画像:Wikimedia Commons〉
現代語訳
花の色はすっかりあせてしまいました。
むなしく月日が流れていくなかで、私がもの思いにふけっていた間に。
【花の色は】
桜の花の色。ここでは自分の美しさの象徴としても使われている。
【うつりにけり】
「色あせてしまった」の意味。時間の経過と衰えを感じさせる。
【いたづらに】
むなしく。何の成果や意味もないまま。
【世にふる】
「世を経る」=「この世で長く生きる」の意味。
「ふる」は「降る」とも掛かっている。(掛詞)
【ながめせしまに】
「ながめ」は「眺む=物思いにふける」と「長雨(ながめ)」の掛詞。
「もの思いにふけっていた間に」「長雨に打たれている間に」という二つの意味がある。
作者: 小野小町
小野小町(おののこまち)〈生没年 不詳〉
小野小町は平安時代の前半ごろに活躍した女性歌人で、六歌仙の一人として知られています。美しく才気溢れる女性として宮中に仕えたと伝えられていて、その美貌と詩才は当時から伝説となり、世界三大美女に数えられています。(残り2人は、クエスパトラと楊貴妃)
彼女の歌は特に恋愛や美しさ、人生の無常をテーマにしたものが多く、その繊細で情感豊かな表現は高く評価されています。
小野小町には多くの伝説が伴います。
例えば「百夜通い」と呼ばれる恋物語では、深草少将という貴公子が彼女に恋し、100日間毎晩通い続けるという約束を果たそうと奮闘しますが、99日目に亡くなってしまうという悲しい話があります。
こうした伝説は小野小町の美しさと同時に、その美しさがもたらす切なさや孤独も象徴しています。
晩年に関しても、伝説の中では年老いて美しさが衰え、世間から捨てられるような寂しい姿が描かれることが多く、彼女の人生観には仏教的な無常観や世の儚さが色濃く反映されています。
これらは後の日本文化の美意識、わび・さびの思想にも大きな影響を与えました。
小野小町は実像は謎に包まれているものの、その名は「美と悲しみの象徴」として日本の文学や芸能の世界で特別な存在となっています。
彼女の和歌と伝説は、多くの人に感動を与え続け、今日でも幅広く愛されているのです。
🌸鑑賞:自らの美しさの移り変わりと心の葛藤
冒頭の「花の色はうつりにけりな」という表現は、桜の花の色が儚くも色褪せていく様子を映し出しており、それを自分の若さや美貌の衰えに重ねています。
「いたづらに」という言葉には、ただ虚しく時間が過ぎ去ってしまったという無力感や虚しさが込められており、人生の儚さを強く感じさせます。
そして「我が身世にふるながめせしまに」の部分では、「ながめ」が「長雨」と「物思い」の掛詞となっており、長く続く雨のように憂いに沈み、もの思いにふける自分自身の姿が映し出されています。
この歌の魅力は、短い言葉の中に美しさの儚さと人間の内面の深い感情が巧みに織り込まれている点にあります。
時間の流れとともに避けられない老いという現実を受け入れつつ、それに対する哀しみと葛藤を詠み上げたこの歌は、多くの人の共感を呼び、今もなお日本の古典文学の中で高く評価されています。
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