【百人一首解説】NO.55  大納言公任

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今回の和歌

滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ

〈画像:Wikimedia Commons〉

現代語訳

現代語訳

滝の音は、もうとっくに絶えてしまって久しいけれど、

その名(評判・名声)は今でも世に伝わって、なお聞こえてくるものだ。

語句解説

【滝の音は】

滝が流れ落ちる音。

「滝」は比喩的に、人やものの勢い・名声・存在感を象徴することもある。

【絶えて久しくなりぬれど】

「絶えて」=動詞「絶ゆ(たゆ)」の連用形+接続助詞「て」。

「絶える」は「途絶える」「止まる」という意味。

「にけり」= 形容詞「久し(ひさし)」の連用形で、「長い間」の意味。

動詞「なる(〜になる)」+完了の助動詞「ぬ(完了)」の已然形「ぬれ」+逆接の接続助詞「ど」。

「〜になってしまったけれども」という意味。

【名こそ】

「名」は名声や評判のこと。

「こそ」は強調の係助詞です。

係り結びの文法で、結びに已然形(聞こえ「けれ」)が来る。

【流れて】

動詞「流る(ながる)」の連用形で、「流れる」「世間に広まる」などの意。

「流れ」は滝の縁語です。

【なほ聞こえけれ】

「なほ」は「それでもやはり」の意味の副詞です。

動詞「聞こゆ(きこゆ)」の已然形+過去の助動詞「けり」の已然形「けれ」。

「けれ」は、前の「こそ」を結ぶ言葉で「けり」の已然形となります。

作者: 大納言公任

藤原公任ふじわらのきんとう〈966年 ~ 1041年〉

〈画像:Wikimedia Commons〉

平安時代中期の貴族・歌人・学者であり、当時の文化人の中心的存在でした。

父は関白・藤原頼忠(よりただ)、藤原氏の中でも名門中の名門に生まれ、政治と文化の両面で活躍しました。

彼は特に文学と和歌の分野で高い評価を受けており、『三舟の才(さんしゅうのさい)』(和歌・漢詩・管弦すべてに優れていた人物)として後世に知られています。

また、和歌に関する重要な歌論書である『和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)』を編んだことでも有名です。

洗練された言葉選びと理知的な構成が特徴で、宮廷文化の成熟を象徴する存在です。

自然の描写を通して人の心情を詠む手法にも優れ、まさに「教養と感性を兼ね備えた貴族詩人」と言えるでしょう。

彼の作品は『拾遺和歌集』や『後拾遺和歌集』など、多くの勅撰集に収められており、百人一首にもこの滝の歌が採られています。

鑑賞:かつての音、今はもうなくても 💦

過ぎ去ったものの存在感が、なお世の中に残り続ける不思議さと余韻を、美しく表現した一首です。

滝の音が既に絶えて久しい、つまりその姿も音も現実にはもうなくなってしまった。

しかし、その「滝の名」はいまだに人々の間で語り継がれている。

視覚にも聴覚にも届かないのに、言葉や記憶によって存在し続けているものがある、という事を詠んでいます。

かつては激しく流れていた滝もやがて水が枯れ、静けさに包まれるように、人の栄華や存在もやがて形を失っていく。

それでも名声や評判は「流れるように」世に残り、静かに人々の耳に届いていくのです。

藤原公任は、目に見える現象の背後にある「名の力」「記憶の重み」に着目し、それを簡潔な言葉で巧みに表現しています。

この歌には、自然と人生、名と存在、音と記憶という対比が織り込まれており、知的で深い余情を湛えた作品です。

また、「滝」という対象に対して「音」「流れ」「名」といった要素を関連づけることで、読み手に見えないものの存在感を強く意識させるところにも、この歌の優れた詩的技術が表れています。

静けさの中に、かえって深い響きを感じさせる、洗練された和歌です。

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