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今回の和歌
35番 紀貫之(きのつらゆき) 『古今集』春・42
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香(か)ににほひける

〈画像:Wikimedia Commons〉
現代語訳
現代語訳
あなたは、さてどうでしょうね。他人の心は分からないけれど、
この懐かしい里では、花だけは昔のままの香りで咲いているよ。
語句解説
【人はいさ】
「人は」=「相手」や「他人」、あるいは昔の知り合い(特定の人物)を指している。
後の「ふるさと」と対比しています。
「いさ」=「さあ、どうだろうか」という意味の言葉で、相手に対する疑いやためらいをやんわり表す。
【心も知らず】
「も」=「〜さえも」「〜もまた」といった意味の係助詞。
全体で「気持ちさえも分からない」という意味。
【ふるさとは】
昔なじんだ土地、元いた場所。
単に「田舎」ではなく、思い出や過去の関係を含んだ場所。
【花ぞ】
「花」は普通桜を指しますが、ここでは「梅」を指します。
「人の心」と「ふるさとの花」が対置されています。
「ぞ」= 強調の係助詞、下の動詞「にほひける」と呼応し、係り結びを構成する。
↓従兄弟である紀友則も「花」を使っていますが、彼は「桜」として花を使っています、ぜひご覧ください!↓
【昔の香ににほひける】
「香」= 花の香り、視覚だけでなく嗅覚にも訴える表現。
「に」=「〜において」「〜で」といった意味。
ここでは「香に(おいて)」つまり「香りで」。
「にほひける」= 「にほふ」は「香る」「色美しく映える」という意味。
「ける」は詠嘆・過去を表し、「香っていたのだなあ」と余韻を持たせる効果。
平安時代になると現在の、「香り」といった嗅覚の意味も追加されました。
作者: 紀貫之
紀貫之(きのつらゆき)〈866年頃〜945年頃〉
〈画像:Wikimedia Commons〉
平安時代前期を代表する歌人・官人であり、日本文学史上において非常に重要な人物です。
彼は『古今和歌集』の撰者の一人であり、さらにその序文である「仮名序」を執筆したことでも知られています。(古今和歌集の仮名序は紀貫之が優れた歌人達を、自身の考えを交えながら書かれているもの)
仮名序は日本最古の和文による文学批評とされ、和歌に対する深い思想と美意識が伺えます。
紀貫之は貴族社会において中級官人として活躍し、紀伊守(きいのかみ)(現在の和歌山県の県知事のような役職)として地方に赴任した経験もあります。
特に有名なのが、任地から京都に戻る際に記した日記文学『土佐日記』で、これは仮名文学の初期の傑作として位置づけられています。
土佐日記では男性である紀貫之があえて「女性の視点」を借りて仮名文で記すという、当時としては非常に斬新な手法を用いています。
彼の文学的功績は、和歌の美的価値を確立したことにとどまらず、日本語による表現の可能性を広げた点にもあります。
漢文が主流だった時代にあって、仮名を用いた豊かな表現を追求し、日本独自の文学の礎を築いた人物と言えるでしょう。
その繊細な感性と教養、そして文化的な貢献によって、後世の歌人や作家たちに大きな影響を与え続けています。
鑑賞:人と自然の対比、変わるものとかわらぬもの🏡
人の心が移ろいやすく、不確かであることを率直に見つめながらも、自然の持つ不変性や安らぎに深い感動を抱いています。
冒頭の「人はいさ 心も知らず」という言葉には、親しかったはずの人の心が変わってしまった、あるいは本当の気持ちがわからなくなってしまったという作者の寂しさや戸惑いが出ています。
人の心はまるで風のように変わりやすく、その捉えどころの無さに、作者は嘆きや諦めを感じているのかもしれません。
一方で、「ふるさと」の風景は変わらずにそこにあり、特に「花ぞ昔の香ににほひける」という表現が美しく響きます。
ここでの「花」は、故郷の自然の象徴であり、かつての思い出や心の安らぎをも表しています。
昔と同じ香りを放つ花の存在は、激しく変わる人の心情や社会の中で唯一変わらずに残るものとして作者の心に深く染み入ります。
この対比は人生の無常感と自然の永続性を見事に描き出しており、作者の繊細な感受性が感じられます。
人間関係の儚さと、それに対して変わらぬ自然の美しさへの愛着が交錯し、読者に深い共感と哀愁をもたらします。
この歌は時代を超えた普遍的なテーマを扱っており、人生の中で失われていくものと残るものの尊さを静かに伝えています。
だからこそ、現代の私たちにとっても共感を呼び起こす名歌となっているのです。
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